医院名:医療法人真理恵会 田中彰クリニック 
住所:〒224-0003 神奈川県横浜市都筑区 中川中央1-37-9 TNKビル2F 
電話番号:045-914-6560

コラム

この10年ほど、地域誌に毎月載せていたコラムです。内容的に少し古い記事もあります。

2019.10.04

2017年3月 トキソプラズマIgG avidity

妊娠中にトキソプラズマの初感染を起こすと胎児奇形を起こす可能性が非常に高いです。
未だに妊娠初期の血液検査にトキソプラズマの検査を入れていない施設もありますが、その理由はわかりません。トキソプラズマによる胎児の異常はインターネット検索などですぐわかりますのでここでは今回述べません。検査方法はまず採血検査でトキソプラズマIgG抗体の有無を調べます。これが陰性であれば過去から現在までの感染を否定できます。トキソプラズマIgG抗体が陽性であれば、過去から現在のどこかで感染を受けています。持続感染は存在しないので今回の妊娠中に初感染であるかどうかが重要になります。それでトキソプラズマIgM抗体を調べます。IgM抗体は一般的に初感染の一時期しか出現しない抗体なので、トキソプラズマIgM抗体が陰性であれば、今回の妊娠中に初感染を起こしていないことになるので大丈夫です。しかし、トキソプラズマIgM抗体が陽性であると今回の妊娠中に初感染した可能性が出るため胎児にも同時に感染し奇形児となる可能性があります。そのためアセチルスピラマイシンを分娩まで結構の量を服用することをしいられます。
ここで問題になるのがトキソプラズマIgM抗体がなぜかずっと低値で何年間も陽性になっている方が結構いらっしゃることです。そうすると昔の感染なのにも関わらず飲まなくていい薬を飲む羽目になるのです。
そこで調べるのがトキソプラズマIgG抗体のavidityです。これは過去にトキソプラズマに感染していると、このavidityの値が20%より超えて来ます。そのため、20%を超えてきていれば、過去の感染であると診断されます。この検査は一部の検査機関だけで行なわれていて保険適応もありません(何で保険適応でないのか不明)。当院でもavidity検査を実施してトキソプラズマの妊娠中の初感染でないことを診断できた症例が多数あります。もし、あなたがトキソプラズマの検査でしっくりこない結果を説明されたら、ちゃんと説明・検査してくれるところに受診しましょう。

2019.10.04

2016年12月 全国がん登録

法律で「がん」になった方を登録する事になっています。病院はもれなくすべてで、当院のようなクリニックは任意です。ただ、今までの私の経歴からも「がん」の患者様が結構おいでになるため「がん登録」実施可能施設として手を上げてしまいました。すると毎年、登録をちゃんとしていないと私自身が法律に触れる事になるようで刑事罰のおまけまでついていて、、、手なんか上げなければ良かったと後悔しても後の祭でした。今回、登録のために当院にかかられて「がん」と診断された方をきちんと調べ上げましたところ・・・。
子宮頚部癌が2名、子宮体部癌が6名、卵巣癌0名という結果となりました。子宮頚癌の方が多いかと思いきや体癌の方が圧倒的に多い結果になっています。ただ、子宮頚癌検査を受けている方は癌になる前のCIN3(以前の言い方での高度異形成の時点で、上皮内癌のCIN3ではなく)で手術をすることが多く,その方だけを数えると相当数いらっしゃいました。一方、子宮体癌の方は当院だけでずっと診ていた方は2名で進行した体癌にはなっていませんでした。一方、残念にも他のクリニックで診ていた方に進行したがんの方が4名いらっしゃった結果になりました。体癌検査を「痛いから,この検査・・」と医師から説明を受けて実施していなくて本格的な癌の症状が出てから当院に転院されて見つかった方が多かったのです。
あくまでも今回の当院データからの判断ですが、折角内診台に載ったのに体癌検査せず進行させるまで放置してしまうのは、あまりにももったいないかと思います。初期で見つけられてこその癌治療であって、わざわざ進行した状態になるまで放置する必要はないのですから・・。
それと・・本当にFor You おわりなのかな?とりあえず,最終稿です。皆さん、ごきげんよう!

2019.10.04

2016年11月 疑問点まとめ

来月号でForYouが終わってしまうそうですね。休刊と言うことは休むのかな?よくわかりませんが、、、今回と次回で終わりになるので…。
皆さんが婦人科クリニックで感じる疑問点をまとめてみました。順不同ですので関連するものがあればみて下さい。

・女子高生の娘が月経不順でとりあえずピルの飲むことになった。
・多嚢胞性卵巣(PCO)と言われてピルでなおるといわれた。
・多嚢胞性卵巣があるから排卵ができないようになったと言われた。
・子宮頚癌の検査の結果でクラスⅡなので半年後に検査しないといけないと言われた。
・子宮頚癌のワクチンを受けるように強く薦められた。
・月経周期を考慮しないで超音波検査を行い内膜が厚いと言われてピルを薦められた。
・ミレーナという黄体ホルモンのリングがあることを説明せずにピルを薦められた。
・子宮筋腫があると言われてピルを薦められた。
・妊娠20週ちょっとで逆子と言われて注意された。
・カンジダだから,座薬を入れに毎日来るように言われた(クリニックが休みの日は自分で入れるように言われた)。
・40代前半で更年期近いからといわれてピルを薦められた。
・子宮頚癌検査結果をベセスダ表記で説明してくれなかった。
・基礎体温がガタガタなのは計り方のせいといわれた。
・とにかく何でもピルと言われる。

などなど、色々ありますが、当院では上記項目は、ほとんど「違う!(間違っている!)」と思っています。もしこれらの項目で心配になるような項目があるなら当院へおいで下さい。解答があります。
ForYouで毎回これらについて述べていたような気がします。

2019.10.04

2016年10月 夢オチ

数日前に夢を見ました。その内容はたわいもないものですが、20歳代頃の若い妻が現在の私に「今の奥さんと別れて私と一緒になりましょうよ!」といわれている夢でした。若い頃の妻にそう言われて、どぎまぎしている自分がいました。
一般的におつきあいが始まって結婚にたどり着いて、どこかの歌詞の文言ですが「男は結婚はゴールで、女にとってはスタートだ」とうまくいわれているように、出会いの頃からの二人には歴史があります。結婚して、妊娠し、出産し、子育てして、家族の楽しい思い出も紡いでいって、時には不安な事や悲しいこともあります。婦人科でいえば、妊娠できずに焦る時、妊娠したけど出血とかがあって不安で怖いとき、出産して子育てで悩むことなど、また、年齢を重ねてからは子宮筋腫や子宮癌の疑いが出たり、閉経して更年期になったり、その時、ともに夫婦で一緒に歩んできているはずです。もちろんお一人で楽しく生活されている方もいると思いますが、どのような方にも常に年を重ね色々な思い出が積み重なって今があると思います。結構、医療従事者はその合間合間に関与していることが多いので責任は重大だと考えています。なので皆さんの積み重ねた歴史への影響を鑑み、悩みなどがあった際はできるだけのことを考えお手伝いできればと考えています。
先ほどの夢のつづきは「今の妻との歴史を紡いできたので、その歴史を作れていない君とは一緒になれないよ!」と、夢の中でことわりました。リアルは妻からプロポーズされたのでは無く私から妻にお願いして結婚したのに夢のなかでは都合いいことを想像しているようです。
でも、眼が醒めてから、かっこつけずに若い頃の妻を選んじゃっても良かったかな?とちょっと後悔している自分がいました。所詮夢ですけど、ちょっとどきどきしました。

2019.10.04

2016年9月 紹介状

紹介状といっても,私が医師になりたての頃(35年以上前)、前時代的医者から「僕の患者だからよろしく!」(結局、こちらからすると「あんた誰?」そもそもどんな医者だか知らないし・・・に、なる)という名刺の裏にメモが書いてあるようなものではなく、今回の話題は医療情報提供書としての紹介状のことです。
小泉政権以降から大きな病院の初診時、医療情報提供書がなければ病院は別途自費でお金を請求できるようになりました。そのため、医療情報提供書をかかりつけの医師から発行してもらってからでないと受診しにくくなりました。以前かかっていた時に行なった検査内容や診断名治療方針そして治療の効果とその変遷がないと病院側も却って時間もかかり、ひいては患者様の不利益になるので意義はあります。しかしながら、健康保険適応であっても3割負担なら750円が医療情報提供書の費用となります。
そこで不思議なのが、クリニック同士で特に分娩を取り扱う施設でのそのやりとりです。当院の不妊症治療後めでたく妊娠され分娩施設への分娩予約をする際、当然病院レベルに対しては医療情報提供書を携えて受診する事が当たり前となっています。病院によっては前もって医師自らがFAXし、分娩先の医師と話をしてから紹介を受け付けるというのまであります。しかし、とあるクリニックでは「紹介状なんかいらないからとりあえず来て。紹介状っていってもただじゃないから,患者のお財布まで考えてあげてるよ,うちは・・・」みたいなところがあります。「大丈夫かな?」と不安になることがしばしば。特に当院では甲状腺疾患や心疾患、子宮筋腫などの合併症の方も多く診ているだけに、その原疾患合併妊婦となっている方を医療情報提供書無しで診察してから「おたく(当院のこと)からきた患者だけど、今までの経緯がわからないから教えてくれ」と電話かけてきたり(これは口頭で話す内容はない)します。「紹介状不要!早速来ること!」といわれご夫婦で行かれたのですが、今までの既往歴を話したところ「あなたはうちでお産は、そもそも無理だから、他へ行って!」といわれて面食らった方もいます(しっかり診察料はとられたそうです)。「医療情報提供書は不要」といわれた分娩先はちょっと不安を感ぜずにはいられません。
そもそも「紹介状不要!」ということ自体、それまで診ていた当院の診療内容を全く無視するのと同義語ですので、ある意味「非常に失礼」な話なのですが。

2019.10.04

2016年8月 a pregnant woman

妊娠は生理現象の一つです。何も無ければ何も変なことは起こりません。妊娠経過をまっとうし分娩に至るのが普通です。しかしながら、そうでは無く、色々な事が妊娠経過中、分娩経過中に起こります。そのことを前もって推定し回避する。そして、実際に起こってしまったら,できるだけ速やかに対処し修正する。修正不可能である場合はできるだけ最終結果が良い形になるように持っていくのが医療関係者の責務です。
ですので妊婦健診の際は患者様からすれば当然楽しみにしている赤ちゃんをみるわけですから幸せな気持ちになってもらいたいのですが、私たち医療関係者は顔には出さずに異常が無いかの目配りを怠らないようにしています。いわゆる、バックヤードの仕事だと思っています。
何も異常な感じを受けずに妊娠経過を過ごす状況を作り上げるのが私たちの使命です。その結果「a pregnant woman」という形になってもらうのを私は理想としています。言い方は変かもしれませんが生理現象である妊娠中の状態、つまり、何も異常の無い「どこにでもいる妊婦」になっていてもらうのが理想です。できるだけ特殊な状況になってしまった「the pregnant woman」にならないように注意を払います。
非常に抽象的かもしれませんが、そう思っています。ただし当院ではおいでになっているすべての方が「a patient」ではなく「the patient」と考えていますが・・・。

2019.10.04

2016年7月 名前

色々なものには名前がついています。医学関係においては、俗称と医学用語のように分かれているものがあります。代表的なのには「よだれ」「唾(つば)」は俗称ですが、「唾液」は医学用語です。「血(ち)」は俗称ですが「血液」は医学用語です。患者様のお話を聞くときは両者をうまく使い分けるのが肝要です。処方される薬も「一般名」と「薬品名」があります。一般名は非常に化学物質的な表現で難解な感じがします。薬の名前はよく使う「薬品名」の方が流布されてしまっていて、突然「一般名」で言われたり「ジェネリックの薬品名」(先発品に似てる名前も多いですが、似ても似つかない名前もある)を言われると、なんだかわかりにくいことがあります。その点を理解して両者を使い分けながら説明をしています。
当院のクリニックの名前も開院する際にありがたいことに、それまでかかっていて下さった患者様からすぐ私だとわかるように「田中」ではなく、フルネームで「田中彰」とつけてほしいと言われて名付けた経緯があります。その際、近隣だけでなく全国で同じような名前がないかは確認してからクリニックの名称決定しました。そのおかげで「女性医師ですか?」の問い合わせは、ほとんどありません。当然、似た名称のクリニックもないので勘違いされることもありません。
飲食店でも似た名前で混乱しも、両者で揉めていることがありますが、クリニックの名称も数文字違いのみで、ほとんど一緒の名称のものもあり、それはそれで混乱しますよね。
「名前は大事です」と最近ひしひしと感じています。

2019.10.04

2016年6月 検査結果の伝え方

当院では患者様からの電話での問い合わせは結構気楽に行なってもらっています。一番多いのが妊娠中に内科や耳鼻咽喉科などにかかられて処方されたお薬を妊娠中に飲んでいいのか?というものです。それ以外は「こういう症状があるけど・・、出かけていいですか?」とか抽象的なものまであります。でも、ほとんど問い合わせのないものには、検査結果をお知らせした後、再度そのことについて確認の質問です。でも、不思議なことに他院で実施され結果報告された検査結果をどう解釈したらいいのかというのはあります。
ちなみに当院では、よほどのことが無い限り検査結果を聞きに来ていただいています。というのも代表的なものの頚癌検査は以前からここでお話ししているようにベセスダシステムの略語での表記が基本となっているため、たとえばNILMといわれても一般の方にとっては何のことだかぴんとこないと思います。そのためきていただいて説明をしています。ただ、当院初診の方の中には他のクリニックの癌検診の結果を持ってこられる方がいます。たいていは郵送で細胞診の原本とそこの先生が「医者側の立場」で書いた説明の紙を同封してあるものが多いです。結果の説明の手紙が「患者様側」では書かれていないので大丈夫な結果だったのかどうかが理解しづらい文言が羅列されています。たいていそういうクリニックは混んでいて電話での問い合わせも理解できるほどの説明を得るのはほぼ不可能です。結局、他のクリニック(例えば当院)に来て、検査を実施してない医師から説明してもらって安心されるという二度手間になっていることがあります。ちなみに、手紙のみで返事を送る医師はこのようなことになっていることはあまり気づいていません。なぜなら、その患者様はそこに行かないからです。人間ドックでは無くクリニックで検診を受けているのに結果を理解できにくい手紙の添付のみで済ますのは私にはできません。面倒でも来てもらっています。横浜市癌検診の結果は郵送で返事してもいいことになっていますが、ベセスダシステムになってからは結果を聞きに来てもらっています。そして、さらに横浜市癌検診の結果の場合は患者様からは再診料はいただいていません。
折角検査しても結果が理解できなければ全く意味が無いですよね。

2019.10.04

2016年5月 納得と理解

残念にも流産される方がいらっしゃいます。その時、いつも「残念です。流産のことは納得しなくていいから・・・でも理解して下さい」と話してから説明をします。流産の経過も色々です。妊娠ごく初期の流産で妊娠反応でのみで妊娠がわかるけれども子宮の中にGS(胎嚢:赤ちゃんの入る袋)が、まだ見えない超極初期に流産してしまうものがあります。俗に化学的流産(chemical abortion)と言われるものです。先生によってはそれを流産にカウントしないという方もいますが、私はしっかり覚えておいていただきたいし数に入れることにしています。化学的流産は化学物質で流産させたみたいな誤解をうみかねない名前ですが、そういう意味では無く、妊娠反応という化学反応でのみ妊娠がわかり画像上などではまだ妊娠であることが確認できない時期の流産という意味です。さらにはGSのみで胎児が見えずに流産するいわゆる枯死卵や胎児心拍を確認後に心拍停止が起こる子宮内胎児死亡も流産です。さらにはもっと大きい週数で胎児は元気なのに破水してしまい流産される方もいらっしゃいます。
でも、いずれも「患者様には納得なんかしなくていい、でも、理解して!」と話しています。私自身が流産なんて理不尽なこと納得できないからです。でもその経緯はしっかり理解されておかないと、次の妊娠の際、以前と同じ事を繰り返すのではないだろうかと当然考えてしまうわけで、今回のことをきちっと理解できるだけの検索をしてお別れをしないといけないと思っています。不妊症からやっと妊娠したのに化学的流産になった方だけで無く初めての流産であっても、その気持ちは筆舌に尽くしがたい悲しみです。納得は不要です。我慢せず悲しんで下さいとしかいえません。でも、理解することによってその先には次の妊娠が待っていることがわかりますから・・・。
今月特に不育症の管理をしていた方や化学的流産後の方がこれらのつらさを乗り越えてたくさん妊娠され順調な経過をとっていらっしゃいます。そして、その方々から「流産時のつらかったときに悲しんでいい」と言われたのでかえって楽になったとのお言葉をいただいたので悲しい話ですが流産について書きました。

2019.10.04

2016年4月 Déjà vu?

最近、妊婦健診をしていると「あれ?この妊婦さんに超音波検査で同じ大きさの胎児をみながら、同じように説明して、元気です!といったような感じがする」事があります。決して私がぼけちゃったのではなく・・・です。でも、実際は違うのですが・・・というのも、当院ではお子様連れで診察においでになってもかまいませんし、その対応もしています。そのため「あれ?この間見た光景が・・」は、実は妊婦健診に一緒についてきている、そのお子様が数年前にお腹にいた時の検診を思い出しているからなのです。ついこの間までお腹の中にいて超音波検査でお母様に「元気です!」と説明していたはずの胎児が、今度は妹か弟になる胎児のエコーをみて「赤ちゃんがいる!動いてる!かわいい!」と言っている様をみると「なんかすごいなあ」と素朴に思ってしまいます。
お母様になっている方もそのお母様のお腹にいたときがあるわけで、いつまでたってもこどもはこどもというのはすごくわかる気がします。今年の暮れに還暦になる私でも母からすれば赤ちゃんだったときの事から面々とつながっていて,いつまでもこどもなのだと思います。
産婦人科にとって「夫と妻」が「お父さんお母さん」になっていく姿はすごく微笑ましいです。数年前に胎児だったこどもがお母さんの胎内にいる胎児を喜んでいる。そのお母さんも元々は胎児だったわけで、そのときもお母さんのお母さんは喜んでいたと思うと感無量です。本当に自然ってすごいですね。だから、毎回妊婦健診は楽しい仕事になっています。折角の幸せそうな妊婦さんをみれるのにつまらなそうに業務として妊婦健診を行うのは何とももったいないと思います。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
tel.045-914-6560
一番上に戻る