医院名:医療法人真理恵会 田中彰クリニック 
住所:〒224-0003 神奈川県横浜市都筑区 中川中央1-37-9 TNKビル2F 
電話番号:045-914-6560

コラム

この10年ほど、地域誌に毎月載せていたコラムです。内容的に少し古い記事もあります。

2019.10.04

2011年5月 妊娠中の超音波検査(第6回目おめでとう)

妊娠10ヶ月(妊娠36週以降)になるとお腹はせり出してきて、どっこいしょ・どっこいしょと歩いているように見える方もふえてきます。もうすぐお産です。推定体重は週数どおりで十分な発育、胎児は逆子になっていなくて、頭位であること。子宮頸管長の測定は意味がなくなってきて、逆に子宮口が開いてくるのが「ほめ言葉」になってきます(もっと早い時期だと頸管無力症として治療対象になりますが)。前置胎盤はないことはとっくに確認済みで、後は何を見るのでしょうか?
じつは羊水量が非常に重要なのです。妊娠中期までは羊水量は胎児の奇型などの異常を知らせる因子と成りますが、この妊娠末期になってきますと羊水量の減弱が重要となります。妊娠末期の羊水量は胎児の尿(老廃物無)の排泄で供給され胎児がそれを飲み込むことによって消費され、in-out のバランスが取れています。食道奇型や髄膜瘤などの奇型がなければ(あればもっと早い週数からわかっている)脳の反射で羊水は飲み込まれていますので一定量で消費されます。一方、尿の排泄はあくまでも胎児の予備能力に頼っている状態で胎盤機能が悪くなって胎児への栄養分の渡しや酸素の渡しが下手になってくると胎児は潜在的胎児仮死状態になります。そうするとあくまでも胎児の生体活動の余禄(車でいう所の暖機運転みたいな意味です)で尿を作っていたので胎児の心拍が遅くなったり発育が悪くなったり胎動が減ったりする前に、尿をあまり作らなくなるので結果的に供給が減って羊水量が減ってしまいます。したがって羊水量が減ってくることは潜在性胎児仮死の可能性を疑わせる重要な指標になります。そのため10ヶ月になってからは楽しい気持で生まれてくる子供の体重を測定してもらって、じつは羊水量(AFI index)を測定し胎児が元気である確認をすることが超音波の主たる役目になります。羊水量だけですべてのことはいえませんが、重要であることだけは間違いありませんので、10ヶ月になってからの超音波検査は毎週欠かさない方がいいと考えます。本当に抱っこするおめでとうはもうまもなくです。
(今後、原子炉からの放射能のことでさらなる話がでたときはまた放射能について書きます)

2019.10.04

2011年3月 妊娠中の超音波検査(第5回目のおめでとう)

妊娠20週以降からは胎児のそれぞれのパーツごとの大きさを確認するだけではなく、胎児の推定体重としてあらわすことが可能になってきます。もちろん頭の大きさや足の長さなどはそれぞれ重要なデータですが、すべて正常範囲なら推定体重で胎児の発育を診ていたほうが実感がわきます。妊娠25週くらいからは胎児の臓器がよく見て取れます。腎臓が左右ともにあるか心臓のお部屋が4つあって大きな心室中隔欠損がないとか大動脈の位置確認を併用して大血管転位などの奇型が無いかどうか四肢のバランスがOKかとか脳室の確認で水頭症の有無やそのほか見るべきものは多岐にわたりますが、でもすべてを診て行くことになります。当院では超音波検査中、私はずっと説明で話しっぱなしです(ただ、病院によっては先生がそれを口に出してひとつひとつ言うかどうかは別ですが)。当然、知りたい方には性別も確認できるようになってきています。妊娠28週くらいから逆子などの胎児の胎位胎向のチェックが始まります。また、胎盤の位置の最終確認で前置胎盤がない事を確認したりもします。
経腹超音波検査以外の経腟超音波検査では、ちょっとおなかが張ったり知らないうちに子宮口が開いてしまう子宮頸管無力症の診断ができます。それが子宮頸管長の測定です。おなかが張ったということでおいでになられた際は当院ではほぼ全例頚管長の測定は行いますし、妊娠28週では症状がなくても測定をします。とても重要な検査だと考えています。
赤ちゃんの体重を知って「大きくなってきているなあ~~」と思ってくれて、おめでとうです。

2019.10.04

2011年2月  妊娠中の超音波検査(第4回目のおめでとう)

妊娠16週から妊娠20週くらいの頃に胎動を感じるようになれます。そうするとお腹の赤ちゃんが元気であることの確認がお母さん自身でリアルタイムに常時わかるようになるので安心感のアップとともに母親になる自覚がさらに強くなります。
 超音波検査は経腟(内診台の)ではなく、経腹で行うのでベッド上でお腹の上から見始めます。この頃になると顔は見た目、骸骨っぽいけれど、顔がきれいにわかるようになります。口をあけたり、指しゃぶりのような仕草も見て取れます。胎児の大きさはCRLではなく、BPD(大横径)で、そして20週くらいからはFL(大腿骨長)も追加してみていくことになります。性別はスゴく早い方だと妊娠12週くらいでも診断できますが、一般的に徐々に性別判断がしやすくなっていくのもこの時期からです。
 4D超音波検査は当院では無料で通常の超音波の時に同時に行っていますが、妊娠20週くらいまでが非常に簡単に見ることができます。妊娠20週を超えますと胎児と子宮壁とが接触する位置関係になることが多くそうなると4D画像が綺麗に取れなくなることが多く、赤ちゃんが動いて、子宮壁から離れたときを狙って撮影しないとうまく取れないので、手間がかかります(それで4D超音波検査が別途高額な金額を請求する医療施設があるのかと思います)。本来4Dは内部を立体的に見るものなので、胎児が大きくなるにつれお母さんだけでなく、さらに胎児の中味が立体的に写ってしまうことになり、理科室の解剖のお人形状態になっちゃう事があります。
 妊娠20週からは推定体重も一緒に計り始めます。その時は胎児のおなかの断面積をBPDとFLに追加することで計算できます。だんだん、超音波検査では赤ちゃんらしくなっていくので、わくわくできます。胎動感じて、おめでとう4回目です!

2019.10.04

2010年11月 妊娠中の超音波検査(第1回目おめでとう)

妊娠中の超音波検査についてお話しようと思います。
一般的な流れでお話しすると予定の月経が遅れて市販の妊娠検査薬を使用して陽性になると妊娠の始まりです。現在の妊娠検査薬は1リッターの尿中に50単位のHCG(ヒト絨毛性ホルモン:将来胎盤になる組織の絨毛から作られます)があると陽性になります。検査薬の説明書には陽性になったらできるだけ速やかに産婦人科に受診するように書いてあります。一方、産婦人科では妊娠反応が陽性であった方も経腟超音波検査で診察しても、GS(胎嚢:赤ちゃんの入っている袋)が子宮内に確認できない事があります。というのも、GSが最も早く見えるのは1000単位/リッターを超えないと見えてきません。私も説明で早くて1000単位。2000単位あるのに見えないとちょっとまずい。4000単位あるのにGSが子宮腔内に見えないと正常妊娠はありえないという説明をしています。したがってHCGの検査キットの説明書通りに受診するとGSが見えなくて来院するのが早すぎるといわれる事があります。しかし当院では早すぎても来院されることを勧めています。というのもGSが見えていなければ血液中のHCG定量検査を実施し、その数値によって予後の判定に役立つからです。したがって未だGSが見えない段階でおいでになっても「子宮外妊娠の可能性がある」とは言わないし「正常妊娠かどうかわからない」というような説明はしていません。正確に言うと、回りくどいですが「子宮外妊娠などの異常妊娠を否定することができていない状態」「正常妊娠ですと宣言することが未だできていない状態、もうちょっと待とうね」という説明をしています。外人の患者様にもその際、このことを説明するのですが、非常に回りくどい表現なので英語で説明するのが大変です。でも、良くこの状態で他院において「赤ちゃんの袋、未だ見えないからなんともいえないねぇ」とさらりと流されて不安になって転院されてくる方がいらっしゃいます。ちゃんと説明してあげればいいのに、せっかく妊娠の開始時期なのに超不安な状態にさせることはないのになぁと思ったりしています。
とにかく妊娠反応陽性なら「第1回目おめでとう!」です。(おめでとうは何回もあります。結婚披露宴と一緒です。入場やケーキカットやお色直しや何回もその度に「おめでとう」でしょ?)

2019.10.04

2010年10月 インフルエンザの予防接種

また、インフルエンザ予防接種の季節がやってきました。
今回用意されているインフルエンザワクチンは主に3価ワクチンです。3価とはA型H1N1(いわゆる新型インフルエンザ)、A型H3N2(香港型)、B型の3種のインフルエンザワクチンが入っています。
今回の予防接種費用が初回3600円を上限、2回目同一医療施設なら2550円を上限となっているようですが、これを決めたのは横浜市だそうです。川崎市は固定のようです。何故このように季節型なのに値段が上昇したのか(クリニックによっては下がったところも有るでしょうが)横浜市に聞いたところ、厚生労働省からの指導のとのことです。そこで、厚生労働省に問い合わせたところ、3人の役人の方が担当者とのことで値段を決めたのは各市町村であって厚生労働省では決めてはいないとのことでした。インフルエンザ予防接種は「生活保護や高齢者の方々などの援助的事業」と去年から始まった「新型インフルエンザ予防接種事業」との2つの契約があるらしく、それに基づいてこれらの契約をすると価格を含め色々な縛りができて、結局、値上げをすることになります。
当院は産婦人科のため、防腐剤(チメロサール(有機水銀)を代表とする)の無添加のものしか使用するつもりがないので(妊婦に対して国は無添加を許可していますが他の対象者はだめだそうです。不妊症の方などは潜在的に妊婦なので当院は無添加しか使いません)、以前は任意接種分には行政が口を挟んだりしなかったのですが今年からはすべてが統制のもとに行われるようで「無料接種対象者の予防接種事業」への参加を取り下げました。
10月1日から運用されているのですが、実際にどのように運用するのかは未だ決まっていないそうです。本当に何なのかよくわかりません。
とにかく、みなさん、病気にならないようにせっかくの予防接種は受けましょう。当院は防腐剤抜きのインフルエンザワクチンで1回接種の方は2500円、2回接種の方は2000円を2回と考えています。当院の考えが変なのでしょうか?よくわかりません。

2019.10.04

2010年9月 ジェネリック薬剤について(その3)

前回は先発薬剤に後発薬剤(ジェネリック)が追加されると、似たような名称が混在してヒューマンエラーをひきおこす可能性が高くなりそうだということをお話しました。
今回は、ジェネリック薬剤がどんどん販売されることに関して、ちょっと、個人的に不安を感じている事をはなします。
車やコンピューターの開発には相当のお金を費やしています。そのため、製品化された時に価格にその開発費は上乗せされ、回収され、さらに次世代の開発費にも充てることになります。車やコンピューターの場合は似たような製品が出てきても、国を挙げて、後発製品を薦めることはしません。従って、新製品の段階ではその製品は独壇場です。しばらくたって、ブームが去っても、しばらくは、なだらかにフェードアウトしていくことが多いです。急に後発製品にその席をのっとられることはありません。
薬剤はどうでしょう? 当然、先発薬剤には膨大な開発費が投じられています。しかし、特許(ちょっと短い気がしますが)期間が終わると、そっくりなものを作れることになっています。これが後発薬剤(ジェネリック)です。本来、後発薬剤が出てこなければ、また、国が推奨したりしなければ、販売量は、なだらかなフェードアウト状態になるところを、急激に販売量減少を起こすことになります。すると近視眼的には安いものが流通して、スゴく得した気になるかもしれませんが、長期的には今後の新薬の開発費に回すつもりの収入を得られないため、日本の製薬企業が新薬の開発が遅れる結果を招くことはないでしょうか?これが単なる危惧であればいいのですが、日本の製薬会社(ジェネリックの会社ではなく新薬開発能力のある)がどんどん外資系製薬会社と合併したりしてきていて若干不安です。
また、非常に重篤で過敏な薬剤アレルギーのある方が同じ成分であるにもかかわらず、糖衣錠形態が異なるため、ジェネリックでアレルギーを起こした例も聞いています。
ジェネリックの利点も沢山あるのですが、後発品を国を挙げて勧めるのは、いかがなものかと考えている次第です(その1にも書いたとおり。価格がすべて!の論理で、はなしが進んでいるので・・・)。

2019.10.04

2010年8月 ジェネリック薬剤について(その2)

クイズです。次の薬のうち、子宮収縮抑制剤:略して(抑)と子宮収縮剤:略して(収)と黄体機能不全の治療薬:略して(黄)は、どれとどれでしょうか?
ウテメリン・メテナリン・ウテロン・ヒスロン・パルタン・デルガニン・メテルギン・ルトラール・ルテオニン・レキサピン・・・。
答はウテメリン(抑)、メテナリン(収)、ウテロン(抑)、ヒスロン(黄)、パルタン(収)、デルガニン(収)、メテルギン(収)、ルトラール(黄)、ルテオニン(抑)、レキサピン(抑)です。
このうち先発薬剤はウテメリン(抑)、ヒスロン(黄)、パルタン(収)、メテルギン(収)、ルトラール(黄)です。先発薬剤だけを見ているとその系統に応じて名前が違う感じがわかるのですが、これに後発薬剤が加わると非常に似たよう名前が増えていって、わかりにくくなります。特に後発薬剤の場合は最近どんどん作られていることもあり、聞いた事が無い様な名前の薬剤のことが(宣伝がほとんどないので)あります。もっと先発品に順ずる名前にするか、成分名で名前をつけないと非常にわかりにくいです。「処方薬を後発薬剤に変えますか?」といわれて「ハイ、お願いします。」といった場合、初めて聞く名前の薬剤が出され、そして最初のクイズのようになんだか全部同じグループのように思える名称なのに全く効果が逆の薬を出されても患者様はまず気づけません。当然、処方薬を間違えた場合は処方する医療施設・調剤薬局に全責任があるのは事実ですが、いかにもヒューマンエラーをひきおこしてくれ!といわんばかりな後発薬剤の乱立はいかがなものかと考えています。当院は主な処方は院外処方によっているので院内においてあるのは救急薬剤だけなので救急時はダブルチェックで先発薬剤を処方しています。
今後は患者様自身が処方箋に基づいて調剤薬局で処方してもらった薬剤の添付文章内容と処方箋を出した医師の説明内容と同じであるかを毎度確認される方が良いと考えています。

2019.10.04

2010年7月 ジェネリック薬剤について(その1)

黒柳徹子さんがCMをしている、あの有名な「ジェネリック」のお話です。私のところは産婦人科ですので、夜中でも「妊娠中ですけど、内科でもらった薬、飲んでいいですか?」などの問い合わせがよくかかってきます。もちろん、きちんとお答えするためにも正確に薬の名前をお聞きするのですが、聞いたことが無い名前が出てきます(枕元にはジェネリックの薬の最新版の本を置いています)。たいていは発売されたばかりのジェネリック薬剤です。厚生労働省の表記を使って書きますと、初めて開発され使用された薬剤を「先発医薬品」といい、ジェネリックはその薬の特許上の期限が超えた際に同じものを作れるようになった薬剤で「後発医薬品」といいます。
当院の患者様も調剤薬局でジェネリックを勧められ、変更されている事があります。私としましてはできる限り「先発医薬品」で処方するように心がけています。決して「後発医薬品」を否定しているのではありません。といいますのも、私のところの処方箋にはほとんど「変更不可」という署名をしていません。つまり、「後発医薬品」に変更してくださって結構ですという形をとっています。では、何故「後発医薬品」で処方箋を書かないかといいますと、それで書くと変な縛りが発生することがあるため患者様に大変お時間を取らすことがあるからです。その理由は厚生労働省の通達のためです。その通達とは「後発医薬品への変更調剤は変更調剤後の薬剤料が変更前のものと比較して同額以下であるものに限り対象となるものであること。」(抜粋)となっています。簡単に言うと、薬が同じものなら価格の安いものには変更していいけど、ジェネリック同士であっても、金額が高くなるような変更はダメと書いてあるのです。もし仮に私の処方の薬剤が一番値段の安い後発医薬品であった場合、それより値段の高い後発医薬品しか調剤薬局に置いてなければ、薬をもらうためには私のところに連絡し、その承諾を取って、さらにその要件を満たしているか、私が確認し、カルテの記載に追記して新たな処方をしなければならず、非常に時間をとります。
こう考えてみると患者様の支払いが安くなるのもいいのですが、このシステムは患者様の利便性というよりも価格第一主義の感は否めません。ちょっと不思議です。

2019.10.04

2010年2月 不育症(習慣性流産)その1

妊娠はするのに流産を繰り返してしまう病気を総称してこの様にいわれます。子宮筋腫や子宮奇形のように受け入れる子宮に問題があり妊娠が継続できないものやご両親のどちらかに染色体異常があるため胎児が成長できずにくりかえし流産するものもあります。この様な理由とは別に免疫学的な理由での不育症が近年(あえていうとマスコミが取り上げたのが近年)問題視されています。私の日本医科大学や私が部長をしていた横浜赤十字病院では20年以上前からそれに取り組み治療し無事出産されている方が多数いらっしゃいます。
免疫学的な不育症は母体が胎児に対して拒絶反応を起こすことによってひき起こされています。臓器移植を考えてみればわかるのですが、他の方から移植臓器をもらって身体に移植されるとやはり異物(移植臓器)を排除しようと免疫機構が働き出します。また、膠原病(自己免疫疾患)という言葉もお聞きになった事があるかと思いますが、この病気は自分自身をある意味異物(排除すべきもの)として免疫が働いて自分自身に対して拒絶反応が働いています。この両者の中間的状態が妊娠です。つまり、移植臓器ほど自分とは異ならず、でも、自分自身でもないもの(胎児以外にも絨毛や胎盤を含む)が子宮内腔にへばりついている状態が妊娠です。もし自分自身に対して免疫が働き拒絶反応を起こす方は、当然、胎児に対してはさらに強く拒絶反応を起こしてしまいます。その反応がおこると拒絶を受けた移植臓器がだめになるのと同じ原理で胎児もだめになってしまうのです。これが免疫機構の働いたことによる不育症の大きな原因です。
具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?今回、紙面が足りなくなったので次回つづきを書きます。(なお、不育症の検査は健康保険が適応される項目も多数あるので高額ではありません。)なお、来月まで待っていられない方は早速、医療施設に相談しましょう。

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